
Medusa
初めて自分の顔を見た怪物
メドゥーサは、今まさに自分の顔を見たかのように見えます。
目は恐怖に見開かれ、
口は悲鳴を上げたまま開いています。
首からは血が噴き出し、
頭上の蛇たちはまだ生きているかのようにうごめいています。
カラヴァッジョは最も凄惨な瞬間を、
時を止めることなく、そのまま捉えてしまいました。
死の瞬間よりも恐ろしい瞬間
もともとメドゥーサは美しい女性でした。
しかしアテナの呪いを受けた後、
彼女の髪は蛇へと変わり、
その目を合わせた者は石になってしまいました。
そしてついに英雄ペルセウスが、彼女の首を切り落とします。
多くの画家はここで勝利した英雄を強調します。
しかしカラヴァッジョは違いました。
彼は死にゆくメドゥーサの顔を、正面から見せるのです。
カラヴァッジョはなぜこの表情を描いたのか
よく見てください。
メドゥーサの表情は、単なる怒りではありません。
むしろ恐怖に近いのです。
そのためこのように解釈する人もいます。
「メドゥーサはこの瞬間、
初めて自分の顔を見たのではないか?」
ペルセウスは鏡のように反射する盾を使って、メドゥーサを倒します。
つまりメドゥーサは、死の瞬間に初めて自分の姿と向き合ったのかもしれないのです。
カラヴァッジョは、その衝撃の瞬間を描いたように見えます。
あまりにも生々しいから、なお恐ろしい
この絵が不気味な理由は、あまりにも現実的だからです。
カラヴァッジョは実際に蛇を持ち込んでうごめく動きを観察し、
自分の顔を鏡に映してメドゥーサの表情を描いたと伝えられています。
光は皮膚の上を鋭くかすめ、
蛇の鱗は湿り気を帯びて生き動いているかのようです。
彼は神話を描きながら、
その手法だけは現実そのものでした。
だからこそカラヴァッジョはバロックの始まりとなる
カラヴァッジョの絵は、常に論争を呼んでいました。
聖人も街の人々のように描き、
聖母さえも理想化しませんでした。
しかしまさにその現実感ゆえに、人々は彼の絵の前で息をのむのです。
ルネサンスが完璧な美を夢見たとすれば、
カラヴァッジョは傷や恐怖さえもありのままに見つめた画家でした。
だから人々は彼を、
「バロックの始まり」と呼ぶのです。
そして《メドゥーサ》は、
その始まりを最も強烈に示す顔なのかもしれません。

