
The Gare Saint-Lazare
煙と光に満ちた駅
この作品は、モネが1877年に駅の公式許可を得て制作した「サン=ラザール駅」連作のうちの一点です。
なかでも、最も自然で生き生きとした作品としてしばしば語られます。
この駅は、モネにとっても馴染み深い場所でした。
彼は幼少期をノルマンディー地方で過ごしましたが、
まさにこの駅こそ、パリとノルマンディーを結ぶ出発点だったのです。
だからこそこの風景には、単なる都市の景観以上のものが宿っています。
モネが長年親しんできた空気感が、そこに刻まれているのです。
近くで見ると、色はほとんど乱れている
絵に近づいてみると、意外なほど荒々しいタッチで描かれていることに気づきます。
筆致は速く粗削りで、
建物の輪郭も明確ではありません。
その代わりに、無数の色が幾重にも重なり合っています。
灰色の中には青みと紫みが混じり合い、
煙の間からは黄みと赤みが揺らめきます。
遠くから見れば一つの情景のように映りますが、
近づいてみると、色の断片が絶え間なく動き続けているのです。
モネは正確な形よりも、
刻々と変わる空気と光の気配をより重視していました。
動く瞬間を捉えるために
駅は、絶えず変化し続ける空間でした。
列車が入ってきて、
煙が広がり、
人々が引きも切らず行き交っていました。
その瞬間を逃すまいと、モネは猛烈な速さで筆を走らせなければなりませんでした。
さらには、より劇的な場面を求めて機関士に煙をもっと多く出すよう頼んだり、
出発しようとする列車をしばし停めてもらうよう求めたりもしたといいます。
それほどまでに彼は、「瞬間」を捉えることに執念を燃やした画家だったのです。
当時の人々は、列車を怪物のように感じることもありました。
今では見慣れた存在ですが、
当時の列車はまったく異質なものでした。
漆黒の巨大な車体が、轟音と煙をまき散らしながら迫ってきたのですから。
人々は列車を、怪物のように感じることもありました。
しかし画家たちにとっては、まったく新しい時代の風景そのものでした。
産業化、
速度、
煙、
光、
動き。
モネをはじめ多くの画家たちは、その変革の瞬間を絵の中に収めたいと願っていました。
だからこそこの絵は、単なる駅の風景ではありません。
蒸気と喧騒に満ちあふれ、
新たな時代がまさに動き始めようとしていた瞬間の記録に、より近いものなのです。




